2022.12.09 FRI
『SINIC理論』により未来を描く共創の場(8月27日(土)東京・赤坂)を振り返りながら、前回は「時代と共に変わる家族の概念」や「自律社会という未来」についてみてきました。(前編はこちら)
後編では、共創の場から浮かび上がってきた「自律社会」の家族観・家族像、そして社会像を通して、本記事をご覧のみなさんと一緒に未来のイメージを高めていきたいと思います。
自律社会の特徴から家族を描くとどうなるか?
共創の場からみえてきたものは“開かれた多様な家族”というキーワードです。
これは家族の概念が時代と共に変わっていく中で、これまでの枠組みが取り払われた“家族”が形づくられていくことを示唆します。
つまり、自律社会では、私たちは自身が属するさまざまなチームを、最適化社会までの家族と同等にみなす“家族観”をもつようになっているということです。
今回、ミレニアル/Z世代の参加者の声から、次世代ならではの価値観や意識というものがみえてきました。
たとえば「“普通の家族”というスタンダードがない状態を志向する」、「次代を担う子どもを“コモンズ(公共財)として捉える」、「“家族”から“ファミリー”へのシフト」などといった見方です。
振り返ってみると、かつては日本でも養子縁組が多くみられるなど、現在ほど厳密に家族は血縁関係であるべきとは考えられていない時代がありました。
自律社会はこれまでの延長線上にない非連続な社会として捉えていくと、こうした背景にある次世代の価値観や意識が、新たな家族観を想起させてくれるのではないでしょうか。
それでは、自律社会の家族像はどのようにイメージしていけるでしょうか。
自律社会では、個人は自分に合った生き方を選び、その中で他者とのつながりをもちながら、こころ豊かな暮らしを営むようになります。
それは血縁によるつながり以外にも、使命感・価値観での結びつき、好奇心を満たし合う関係など多岐にわたっていきます。こう考えると、個人はおのずと属するチームが従来と比較して多様になっていくはずです。
自律社会の家族観にあるように、属するチームがまるで家族のように自分の居場所となり、さまざまな場を渡り歩く離合集散を繰り返しながら移り変わっていく姿こそが、この社会の家族像になるのではないでしょうか。
こうした自律社会の家族像を導き出した共創の場でのグループごとの意見をみていくことにします。
「現在は家族の中でしっかりとした役割を果たすことが求められがちだが、どうしても完璧とはいかない。仮に自分が属するチームも家族同様にみなせると、それぞれの場でいろんな役割を果たせる可能性が広がる。すると、個人がこれまで以上に活躍できるようになり、周囲との関わりを通してより心の充足を得ていける自律社会となる」
「個人の属するチームの一つぐらいに血縁関係の家族が位置付けられると、それは造語で“家属”とも表現できるようになる。共通する趣味や価値観など自分に合った軸に沿ってチームをもち、その所属(○○属)ごとに個人が他者とつながる自律社会となる」
「たとえば、社会課題を解決するなど自分の求めるものに応じて形成されるプロジェクト型のチーム、あるいは、メンターやメンティーのような互助関係にもとづいて形成されるチームなど、個人の生き方を追求する中でおのずとつながりが増していく自律社会となる」
こうした自律社会の家族像がみえてくると、社会像はどのようにイメージしていけるでしょうか。
共創の場では、大きく2つの社会イメージがみえてきました。
一つは「個人が属するチームごとに多彩な能力を発揮し、新たな価値を創造していく社会」。もう一つは「チームのつながりによって、幸福の総和を拡大していく社会」です。
ここまでみてきたように、「自律社会」は、開かれた多様な家族という家族観のもと、個人が離合集散するチームを介してこころ豊かな暮らしを織り成し、Well-beingを追求する分散型社会と表現できるのではないでしょうか。
あらためて、SINIC理論の未来を考えるベースとなる社会・技術・科学の円環的な相互作用から共創の場での議論を俯瞰してみることにします。
そうすると、たとえば家族観が血縁関係だけに縛られないとすれば、人の結びつきを新たに定義づける科学的な立証の確立が待たれるのではないだろうか。また、人が多様なつながりをもつ中では、人が纏うオーラのようなものによるノンバーバルなコミュニケーション技術の確立が望まれてくるのではないだろうか。
このように社会像を起点に技術・科学に関しても、ミレニアル/Z世代の参加者からは、自律社会において考えるべきポイントがいくつも挙がってきました。
最後に、今回のミレニアル/Z世代の参加者の感想を拾い上げるとともに、未来社会の解像度を高めていくことについて考えてみます。
まず共創の場への参加者からの声です。
私が考えていた家族の未来は、今ある形は変えないイメージでしたが、SINIC理論を活用することによって、家族のあり方すら変えて未来を考えていけるというアプローチに大きな驚きと気づきがありました」
「何となく知っていたSINIC理論を『家族』というテーマに結びつけてたくさんの人と探求できたことで、SINIC理論が自分ごと化できたように感じました。今回の場だけでなく、他にもいくつか未来イメージをつくっていけると、多面的かつ多彩な未来社会像にしていけると思いました」
また未来社会の解像度を高めていく上では、今回、描いた未来を出発点に議論を進めていけるパートナーを見い出しながら未来のイメージをさらに広げていける可能性があります。
あらためて、「SINICラボ」の取り組みでは、多くの人とSINIC理論を共有し、この先の社会を考えていくことで、より良い未来をつくっていくスピードを上げていけるように感じています。
実際に今回の共創の場においても、未来を担う若い参加者が話し合い、お互いがもつ情報をシェアすることで、創造性に富む新たな未来社会の一面を描くことにつながりました。
「SINICラボ」では、未来の可能性は無限に広がる中、さまざまな人同士の共創によって、未来を創造していくことが、より良い未来社会実現の近道であると考えています。
こちらをご覧のみなさんにも、今回お伝えした内容から未来を創造していくきっかけにしていただけると幸いです。
(前編にもどる)