2022.11.30 WED
『SINIC(サイニック)理論』という未来予測理論。
1970年以来、それはオムロン(株)の経営の羅針盤です。
しかし最近、SINIC理論は企業だけでなく、個人や社会にとっても未来を指し示すものとして注目を集めます。
そこで未来共創の実験場である「SINICラボ」では、次の社会の担い手となるミレニアル/Z世代のメンバーと、このSINIC理論により未来を描く機会(8月27日(土)東京・赤坂)をもちました。
ここでの前編・後編を通して、その振り返りとともに、本記事をご覧のみなさんと一緒に未来のイメージを高めていきたいと思います。
未来を描くには、その取っ掛かりとなるものが必要です。
そこで『2050年の家族から未来を考える』というテーマを設けることにしました。
なぜ「家族」をテーマに選んだのか?
そう思われた方は少なくないのではないでしょうか。
参加者からも「家族のようなビジネスやテクノロジー以外のテーマで、SINIC理論をどう活用できるのか体感したい」という声が寄せられました。
「SINICラボ」では、“社会を形成する最小単位”と言われる家族に注目し、個人が属する家族を通して未来社会を描いていくことを考えました。
結果として、当初の想定を超える“未来のイメージ”がみえてくるとともに、“SINIC理論の活用”の可能性が広がる機会となったことをお伝えしていきます。
参加者は今回、普段メーカーやIT関連企業、エンタメ業界で働く社会人、これから社会に出ていく学生、そもそもSINIC理論に興味のある人など総勢14名のミレニアル/Z世代のメンバーでした。
共創の場になぜ参加しようと思ったのか?彼ら彼女らからは次のような声が聞かれました。
「SINIC理論をもとに方針を考えている経営者に接する機会があり、自分もこの理論から未来を考えてみたいと思いました」
「2年ほど前にSINIC理論を知り、もっと理解したいと思っていました。テーマが家族ということで、SINIC理論と家族がどのように結びつき、未来を想像していけるのか興味があります」
「最近、家族のあり方が以前とは変化してきていると感じます。現在は時代の転換期だと思い、これから社会がどのようにシフトしていくのか?他の人とも一緒に考えてみたく参加しました」
「これからの世の中には、人にとってもっと心の豊かさが必要ではないかと考えています。SINIC理論を通して社会のニーズを把握し、新たな価値を創造していく思考法を学びたいと思いました」
「まだ世の中にないサービスをどう浸透させていくかを考えるにあたって、SINIC理論を活用したいと思いました」
こうした参加動機にもあるように、先行きの不透明さを一段と増す世の中で、人や社会のこれからを見通していきたいとのミレニアル/Z世代の思いが感じ取れます。
家族から未来を描いていくには、まず家族とは?を考えていくことになります。
みなさんにとって「家族」は、どのように説明できるでしょうか?
血縁関係のある人の集まりでしょうか。それとも、寝食を共にする人の集まりでしょうか。
過去に遡ってみると、私たちが今「家族」と呼ぶものは、100年ほど前に形づくられた姿だったりします。明治時代に民法で家制度ができ、戸主が統一されたことが始まりです。そこから戦後の工業社会を経て、現在のような「家族」の概念に至ります。
ここから、“「家族」の概念は決して普遍的なものではなく、時代ごとに変化してきている”ということが分かります。そうみていくと「家族の未来は現在の延長線上にある」とは必ずしも言い切れないのではないでしょうか。
実際、身近なところでは、家族である親兄弟がオンラインでのみで繋がり暮らす、血縁関係のない者同士が1つ屋根の下のシェアハウスで家族同然に暮らすなど、家族のあり方は既に変化がみられています。
では、今回の共創の場での「家族とは?」という問い掛けに対し、グループごとに出てきた意見をみていくことにしましょう。
「オンライン化が進み、家族は徐々に分散していると感じます。家族という状態を維持できるインフラサービスの充実によって、物理的な距離を気にする必要性が薄れてきています」
「今まで家族は外圧によって決められていたのに対し、これからは自分たちで自由に選択する時代になっていくと思います。今後、価値観や趣味などによるつながりが、結果として家族のようになっていくのではないでしょうか」
現状の家族のあり方や変化をみてきたところで、未来の家族を考えていきます。
ここでは『SINIC理論』が示唆する未来社会の特徴のインプットを通して、家族のこれからの姿をイメージしていくことを目指しました。
そのSINIC理論ですが、「人類史からみた未来予測理論」としてみていくことができます。人類史の進化に沿って社会・技術・科学の円環的な相互作用から過去が説明できるように、この先の未来も同様に考えていくことができるという理論です。
では、SINIC理論での現在はというと、それは「最適化社会」であり、次の「自律社会」への移行期にあたります。
今、気候変動や高齢化、経済格差など、社会には大きな問題が顕在化しています。従来のままでは社会の持続可能性が危ぶまれる中、私たち人類にはその状況を最適化させていく思考や行動が求められようとしています。それが混乱と葛藤という言葉で形容される現在の「最適化社会」の姿です。
またSINIC理論では、人類史について「物」中心・「心」中心の2つの価値基準の変遷から社会の進化を捉えています。ちょうど最適化社会は、「物」中心から「心」中心への移行期です。
近年のSDGsのようなグローバルでの目標達成による変化が求められているのも、こうした価値基準や社会のシフトと重ねてみると頷けるところです。まさに、今は時代の大転換期にあたるといえます。
ここから次に訪れる「自律社会」は、2025年頃の移行が予測されています。
そこでは「心」や「集団(他者とのつながり)」を重視する社会の姿が示されます。
自律社会は「人々がみずからを律しながら、自分に合った生き方を選び、他者とのつながりの中で心豊かに暮らす社会」とされています。
最適コントロールの社会からノーコントロールの社会への移行という自律化に言及されているように、大きく次の5つの特徴によって説明ができます。
このような社会を見据えたとき、果たしてそこに暮らす「家族」の未来はどのように変わっているでしょうか?
続く後編では、自律社会における「家族像」、そこからみえてくる「社会像」についてお伝えしていきます。
(後編につづく)