2022.02.07 MON
これらの動きは、一体どのように体現していけるのでしょうか。
そんな“問い”からスタートした「SINICラボ」の取り組みは、SINIC理論を通して、自分と社会の未来に向けて考える人・行動する人を「未来を編む人」と呼び、彼ら彼女らに内在するインサイトを明らかにしてきました。(SINICラボ活動/前編参照)
後編では、「未来を編む人」たちとはどんな人たちか、そしてどのようなプロセスでこの共通する因子を抽出してきたかをお伝えします。
SINICラボの活動をはじめとして、これまでSINIC理論に触れられたことのある方々の中から、今回は6名の方との対話を行いました。その人物像について、ここで簡単にご紹介します。
まず6名それぞれの方と私たちSINICラボ運営チームとの対話の場をもち、ご自身の現在の状況や考えていること、行動していること、またSINIC理論に触れた経緯などをお聞きしました。
その際、これまで生きてきた中での大きな変化やそのきっかけ、価値観や社会の捉え方などを伺えるよう、さまざまな角度からの問いかけを行い、言葉を丁寧に拾い上げていきました。
そこには、個人の活動を表す具体的な言葉もあれば、社会の概念や自身の感覚といった抽象度が高い言葉も出てきました。これらはいずれも6名の方それぞれが過去から現在、そして未来に向けて思考を巡らし、頭や心の中に浮かんだ事柄でした。
私たちは、こうした一人ひとりから出てきた言葉を受け、6名の方の重なりを見出していくことにしました。すると見えてきたのは、「My Vision(パーパス)」、「興味・関心」、「動いていること」、「考え方・価値観」、「変化のきっかけ」という大きく5つのカテゴリーでした。
なかでも、ここで6名の方から垣間見えた印象深いこととしては、次のような点があります。
・“自分自身の変化”への自覚があること
・“考え方や価値観のシフト”が起こっていること
・“複数のアクション領域”をもっていること
・“自分の興味関心の言語化”ができること
・“未来への自分の在りたい姿やビジョン”を語れること
続いて、この5つのカテゴリーから共通点を抽出し、SINIC理論との接点を明らかにしていきました。それらは、既に前編でお伝えした7つの因子になります。
そして今回、抽出された共通因子について振り返るべく、6名の方が一堂に集う場をもつことにしました。そこでの声を、いくつかピックアップしてご紹介します。
井上さんのコメント -「本当の豊かさとは何か?」 そんなことを考えながら、暮らしの中で試みている実践の様子を紹介くださいました | 「私自身は会社で働きながら、自宅で育てているニワトリを捌いて食べてみたり、蜜蜂を飼育してはちみつを採取したりと、暮らしの中で“自分でやってみる”経験を増やしています。これまで誰かに任せていたことを自分でやってみると、みずからの可能性が拡がる感覚があります」 「『“立ち止まる”、を受け入れる』という因子は、これまでお金という軸で定量化されていた富や役割ではなく、“本当の豊かさとは何なのか?”という、新たに定性的な指標をもち、次の社会の発展につなげていくことではないでしょうか」 |
大越さんのコメント -企業に属しながら、地域に入り込み活動をしている視点から伝えてくださいました | 「『隔たりをみずから混ぜ合わせる』の因子に共感しました」 「私自身が企業という枠を越えて活動していることや、都市から地方への移住をきっかけに、より“個”というものを解き放つことができている実感があります。まさに、自分の中に複数の自分がいる感覚です」 |
東條さんのコメント -自身のゲーム制作になぞらえながら、テクノロジーの進化からみえてくる未来について話してくださいました | 「たとえば、ゲームの制作過程などにTwitterで呟くと、自分の気づきについて、同じように思う他者と共有し合うことができます」 「これまで多くの人が、上の世代の論理やルールに盲目的に従う状況があった中、今の時代ならば、自分のもつ違和感を素直に『おかしいよね』と言えるようになってきています」 「テクノロジーの進化によって、『違和感は未来の兆し』の因子にある“違和感”を、今後、誰もが気づきやすくなる環境になっていくのかもしれません」 |
戸塚さんのコメント -おのおのが豊かさの定義を考えるように、今後は各自が生きる世界をも選べる時代の姿を伝えてくださいました | 「FacebookがMetaという社名に変わりましたが、メタバースは現実ではできないことができる世界。今後はリアルとデジタルの世界の共在が、当たり前になっていくはずです」 「『自身の仮面を取っ払う』という因子に近づくように、現実とメタバースそれぞれの世界で自分を演じることもできれば、そこで本来の自分に気づくこともできるでしょう」 「双方の世界を行き来しながら人間が変容を繰り返す未来は、もしかすると、SINIC理論の『自然社会』のその先なのかもしれません」 |
黄さんのコメント -テクノロジーの活用について、今後より一層考えていきたいとの想いを語ってくださいました | 「テクノロジーと自然の両者は、互いに相容れないものだと感じています。しかし、『自然に任せる』の因子に関連づけて考えると、これからはテクノロジーと自然の共存を目指すことが欠かせないと思います」 「それは『進歩欲の進化』とも関係してきますが、社会の進歩そのものはテクノロジーの賜物である一方で、テクノロジーが進化するにつれ、自然をいかに維持していけるのかを人が意識的に考える必要に迫られてきているからです」 |
山口さんのコメント -テクノロジーの活用に関して、働く現場で見えている景色と重ねてくださいました | 「私がいる教育の現場でも、AIが成し得ていくことが確実に増えています。生徒さんに向けて、教える・テストをつくる・採点するといったことがAIでできてしまうと、“先生”とは一体何をする人なのか」 「AIのようなテクノロジーが人の代替となってしまう時代が訪れたとき、たとえば『ベーシックインカムがあれば、もう大丈夫』という“モチベーションを無くす人”と、変わらず“モチベーションを保てる人”との間に、これまでなかった格差が生まれてきそうです」 「人のウェルビーイングとは何か、そんなことを含めて未来をもっと考えたいです」 |
このように、6名それぞれが共通する因子から思うところ、想起するところを振り返り、未来社会へのイメージを描く一歩を踏み出す場となりました。
「SINICラボ」では、自分と社会の未来に向けて考える人・行動する人を「未来を編む人」と呼び、現在の最適化社会を生きる6名の方に共通する因子を探ってきました。
今回はあくまでも6名の方の考えや価値観にもとづくものの、ここまでの抽出プロセスでみてきたように、これらの因子には、未来を編もうとする人に内包されている要素とSINIC理論の重なりという大きな特徴があります。
「SINICラボ」では、これからも「未来を編む人」と呼べる方々との接点をもち、対話を進め、このような共通因子を取っ掛かりに、この先の「自律社会」、「自然社会」の未来社会像を深めていく場を共に創っていきたいと考えています。
人間と自然のより良きウェルビーイング実現につなげるため、「SINICラボ」では、次の2つの場づくりを目指し活動を進化させていきます。
1.SINIC理論を自分の行動・生活に取り入れ、これからの生き方や社会をより良くしていく議論と実践の場
2.SINIC理論でも未だ想像が難しい「自然社会」とその先の社会を考える場
この2つを追求していくことで何が起きるのか。少しでも関心があり、参画したいと思われた方は、次のコメントフォームから「SINICラボ」宛にメッセージをお送りください。一緒に未来を創っていきましょう。